ブラリ 広島 一人旅

8月13日午前4時起床。

と言うより、眠れなかったと言うべきか。

前日、軽く昼寝をするつもりが6時間以上眠ってしまい、それが仇となって眠れなかった。

携帯のアラームで起き、歯を磨き顔を荒い、トーストを食べ、かなり濃い目のコーヒーを飲み、出発に備えた。

バイクのシートを外している時、夜明け前だと言うのに暑さで汗が滴り落ちた。

午前4時30分、出発。

まずは、阪神高速・東大阪線へ、森之宮入り口から乗り込む。

料金は700円。

スロットルを開けると、風のお陰でさっきまでの暑さがウソのように涼しい。

汗もひいて多少の寒さも感じるが、他の車も少なく、気持ち良く走れる。

まだ、空は暗い。

しばらくして、近畿道へ合流する。

料金は400円。

吹田方面へバイクを走らせる。

交通量は多少増えているが、渋滞する程ではない。

淀川を超える辺りで、漸く空が白み始める。

何事も無く、中国道へと合流する。

慌てるつもりは全く無いので、時速は90kmを目安にした。

走行ラインを気持ち良く走る。

後ろから来た速いクルマが、追い越し斜線を使ってビュンビュン抜いて行く。

俺は、そんなクルマを気にもとめずノンビリ・ムードだ。

もっとも、日帰り旅行なのだから、そんなにノンビリしていられないのも事実だが。

しばらくして、山陽道への分岐に入り、山陽道を走る。

ここでも90kmでノンビリ走る。

最初の休憩は『三木』で取った。

すっかり明るくなったものの、売店はまだ開いていない。

自販機でコーヒーを買い、飲みながらタバコに火を点ける。

家を出る時の暑さがウソのように涼しい。

タバコを2本吸い、缶コーヒーを2本飲んでから出発。

燃料は、この時点で約半分と言ったところだ。

再び、涼しい風の中を気分良く走る。

山陽道は、トンネルが多い。

そして、トンネルに入ると「ゴーッ」と言うか、「キーン」と言うか、そんな音が耳につき、暑くなる。

風が無くなるのだ。

トンネルを出ると風が当たり、涼しくなる。

俺はトンネルに書かれている「○○トンネル ××m」の文字を見て、

短ければホッとし、長ければイヤな気分で入って行った。

「トンネル連続区間」もある。

最大は8個。

たまったものでは無かった。

うるさい音と暑さ。

この二つは俺を憂鬱にさせた。

こんな時、クルマに乗っている連中が羨ましかった。

が、逆にクルマに乗っている連中が可哀想になる場面もあった。

渋滞だ。

こちらはクルマの間をスルスル抜けて、ドンドン前へ行けるが、クルマはそうは行かない。

気分的に路肩走行はしたくなかった。

違反であるのは勿論だが、なんとなく走る気になれないのだ。

広島に到着するまでに、3回渋滞があった。

2回は事故渋滞、1回は自然渋滞。

自然渋滞は、知らぬ間に抜けてしまい、何が原因だったのか判明しない事が多い。

この最初の渋滞は『事故渋滞』だった。

最初の渋滞を抜けて、2度目の休憩を『吉備』で取った。

多少暑くなってきていたが、まだまだ涼しさが残っている。

『三木』の時と同じく、2本のタバコと2本の缶コーヒーで休憩し、給油して出発。

ガソリン代は1034円。

そして渋滞に出くわす。

今回も事故渋滞。

今となっては記憶があやふやで、どっちの事故がとは思い出せないが、

ひとつはトンネルの中にヘッド・ライトと破片が散乱していた。

トンネルとトンネルの間の短い区間のエスケープ・ゾーン(上り線と下り線の間)に5〜6台の車が止まっていた。

恐らくは『玉突き衝突』だろう。

「車間を詰めて、速度を出し過ぎるから事故るんじゃ、バカたれが!」

俺は小声で毒づきながら、現場を走り去った。

広島への思いからか、つい口を出た広島弁に苦笑しながら・・・

もうひとつの事故は単独事故。

ダーク・グレーのワン・ボックスが、天井をこちらに向けて横転していた。

これも恐らく、速度の出し過ぎでカーブを曲がり切れなかったのだろう。

2車線のひとつ、走行ラインは車線規制で塞がれていた。

事故ったドライバーは、重心の高いワン・ボックスで速度を出し過ぎるのが

どれほど危険かを認識できただろうと思う。

生きていればの話だが・・・

このときも広島弁が口から漏れていた。

もっとも、広島弁が出てくる事は俺にとっては自然な事で、父方の祖父母は広島出身だからだ。

正確には、岡山寄りの『福山』なのだが・・・

最後の休憩は『八幡』で取った。

この時点で9時半になっていた。

大阪を出てから実に5時間。

休憩と言っても、缶コーヒーを2本飲み、タバコを2本吸い、トイレに行くだけのもので

休憩らしい休憩ではなかった。

徹夜の所為か、食欲は無かった。

一休みすると、広島へ向けて出発する。

「後少し」

と、自分に言い聞かせて。

暑くなってきてはいるものの風が心地良く、軽快にバイクを走らせた。

しばらく走ると、『広島○○km』の文字が見えた。

出口案内を見て、感慨深いものがあった。

なんだか、「広島に来た」と言うより、「広島に帰って来た」感じが強かった。

広島出口で山陽道を降りる。

料金は5550円。

54号線を市街地に向かって走る。

この時点で、気温はかなり上がっていた。

暑いので、ジャケットの前をはだけて走る。

途中で道を聞こうと思い、前を走っていた白バイ隊員(女性)に信号待ちで声をかけた。

『原爆ドーム』までの道順を教えてもらい、

「分からなくなったら、また誰かに道を聞きますから。」

と言って、別れた。

教えてもらった通りに走り、『中区役所』の前のバス停で止まった。

ジャケットを脱ぎ、グローブを外す。

区役所の前の地図を見る。

「こりゃ、通り過ぎてるんじゃないか?」

そう思いつつ辺りを見回す。

70歳位だろうか、髪が見事に白くなった男性に道を尋ねた。

やはり、行き過ぎていた。

その男性に礼を言って別れ、来た道を戻る。

こんな時、バイクは便利だ。

自動車なら、右左折を繰り返して戻らなければならない。

信号をバイクを押して渡り、引き返す。

そして、到着。

時刻は10時半。

6時間かけて、漸く目的地に着いた。

平和公園内の木陰に、多くの自転車・バイクと共に止め、ジーンズ地のジャケットを肩に掛けて歩く。

『原爆ドーム』を目の当たりにし、感慨深いものがあった。

黒い柵で囲まれた『原爆ドーム』は、予想より遥かに小さかった。

一番高いドーム部分の鉄骨は改修(保存)工事の為か、ベージュ色をしていた。

赤茶けた錆が残った物を予想していたのだが・・・

しかし、周りや内部は瓦礫が散乱しており、当時の様子を伝えていた。

また、ドームの鉄骨部分は僅かに歪んでおり、真上では無く斜め上空で原爆が炸裂した事を物語っていた。

そう、原爆はすぐ傍の『相生橋』上空を目標に投下され、炸裂したのだ。

考えてみれば至極当然で、上空から見て特徴ある字型をした『相生橋』は、絶好の目標だろう。

対して『原爆ドーム(当時は『産業奨励館』)』は、上空から見てであり、

の橋を目標にする方が良かったのだろう。

『原爆ドーム』を半周し、橋を渡って公園内に入った。

灰皿にあるベンチに腰掛け、タバコを吸う。

空は晴れているものの、僅かに薄曇り。

それでも8月の太陽は暑い。

タバコを吸い終え、公園内を歩く。

そして『慰霊碑』を見に行く。

例の、文字が削られた物だ。

このニュースを聞いたとき、俺ははらわたが煮え繰り返る思いだった。

「犯人は、ピカの犠牲者の怨念に呪い殺されてしまえばいい!」

正直、そう思った。

その『慰霊碑』の正面に立つと、『原爆ドーム』が見える。

頭を垂れ、黙祷した。

最後に見に行ったのは『平和記念資料館』。

入館料は、大人50円/子供30円。

地下の展示室に至っては無料。

先に地下を見て回り、次に50円払って中へと進む。

詳細は省くが、ここでは戦争の愚かさと核兵器の恐ろしさを勉強させてもらった。

買った物は、『Tシャツ』と『本』。

No More HIROSHIMAとプリントされたTシャツに、思わず目が行き、買っていた。

『本』のタイトルは『自伝 はだしのゲン』。

前々から『はだしのゲン』は、作者である『中沢 啓治』氏の自伝的作品ではないかと思っていたのだが、

本のタイトルを見て、

「やはり・・・」

と思ったのである。

家に帰ってから本を読んだのだが、まえがきで氏はそのことに触れている。

本の話は、後述する。

『平和記念資料館』は東館から入り、西館で出る。

買い物を済ませて西館へと移動。

館内を見て回り、原爆の熱線で焼けた瓦や、火事の炎で変形したガラス瓶に触れた。

館を出る前に窓から外を眺めると、『原爆ドーム』が見える。

初めて『原爆ドーム』を見たときは、感動しか無かったのだが、この時は何故か涙が出そうになった。

いや、周りに誰も居なかったら、間違い無く俺は泣いていただろう。

絶対に涙が溢れていただろうし、我慢もしなかったと思う。

周りに人が居るとの思いが、俺に涙を流させなかった。

我ながら、意地っ張りな性格だと思う。

外に出て、『レスト・ハウス』に入って、再び『Tシャツ』を買った。

『広島』と大きくプリントされ、『原爆ドーム』のシルエットが描かれている。

写真は撮らなかった。

この事は最初から決めていた事で、

「写真に撮らずに自分の記憶に留める」

と、決心していた。

一瞬、『使い捨てカメラ』を買おうかと思ったが、決心は押し通した。

だが、次に広島を訪れた時は、写真を撮ろうと思った。

午後1時半、そろそろ帰ろうと思い、バイクの所に戻った。

かなり汗をかいていたので、近くの立体駐車場の自販機でポカリ・スエットの500mlを買って飲んだ。

そして出発。

当初の予定では、午後5時か5時半頃出発しようと思っていたのだが、疲れていた為予定を早めた。

ジャケットはバイクに押し込み、Tシャツ姿で走る。

それでも暑い。

高速入り口手前でライダーズ・ジャケットを着、グローブをはめる。

「トンネルの数を、数えてみるか。」

と、思いつつ。

帰りの走りは淡々とした物だった。

S.A毎に休憩を取り、行きより更にノンビリした。

最初のS.Aで給油し、トンネルの数を数えて行く。

ここで不思議な現象に気が付いた。

記憶力の低下である。

ついさっき見た筈のトンネルの名前が思い出せない。

長さにしても、見ている筈なのに・・・

通り過ぎたP.Aの名前も思い出せない。

数えた筈のトンネルの数も、正確で無くなっている。

だから数えて行く際、少しでも記憶に留まるようにと、日本語、英語、中国語で数えた。

中国語は10桁の数の言い方を知らないので、例えば17なら「イー、チー」と数えた。

最終的に、トンネルの数は61ヶあった。

無論、多分だ。

給油は2回行ったが、S.Aの名前は思い出せない。

ハッキリと覚えているのは、俺を追い越したクルマ(家族連れのワン・ボックス)が

手を振っていた事と、それに対して俺が手を振り返した事。

お互いが数度繰り返して手を振った事くらいだ。

家に着いたのは午後10時40分。

18時間の旅だった。

合計16096円の交通費の旅だった。

疲れていた俺は、しばらくの間17時間だと思い込んでいた。

さて、先に書いた『自伝 はだしのゲン』についてだが・・・

『はだしのゲン』は、作者の『中沢 啓治』氏の実体験がマトモに反映されている。

家族構成も全く同じ。

違うのは一部の人の名前と、体験した事か聞いた事かの違い位の物だ。

名前が違うのは、大体が亡くなった人か生きている人かの違いだろう。

違う名前、あるいは名前を明かしていない人は現在も生きている人だろう。

例えば二人の兄の名前は明かしていない。

長兄・次兄と書かれているだけだ。

無論、例外もある。

原爆の日に亡くなった父の名は『晴海(はるみ)』。 『はだしのゲン』では『大吉(だいきち)』となっている。

近い名は、同じく原爆の日に亡くなった弟の名で『進(すすむ)』。 『はだしのゲン』では『進次(しんじ)』。

後年亡くなった母の名は『キミヨ』。 『はだしのゲン』では『君江(きみえ)』。

全く同じ名前もある。

原爆の日に亡くなった姉の名は『英子(えいこ)』。 『はだしのゲン』でも『英子(えいこ)』。

原爆の日に生まれ、4ヶ月半後に亡くなった妹の名は『友子(ともこ)』。 『はだしのゲン』でも『友子(ともこ)』。

この二人の姉と妹に対し、氏は何か特別な思いがあったのだろうか?

他の登場人物は(全く、あるいは微妙に)名前を変えているのだが、この二人だけは本名そのままである。

亡くなり方も多少違う。

漫画では弟の進次は上半身が家の外に出ていたのに対し、進は頭を挟まれ、そこから体が外に出ていた。

父の晴海と姉の英子は、漫画では二人とも柱に頭部を挟まれ、外が見える状態だったのに対し、

実際は父の姿は見えなかったようだし、姉は柱に押し潰され、即死だったようだ。

また、漫画では主人公の『ゲン』がその場に居合わせていたが、氏は後に母から話を聞かされただけで、

その場には居合わせていない。

妹の友子は、原爆の日に生まれた事は共通しているが、『ゲン』が出産の場に立ち会ったのに対し、

氏が母と再開した時、既に生まれていた違いがある。

亡くなったのも、漫画では生まれてから約二年後だが、実際は4ヶ月半の短い一生だった。

・・・これくらいにしておこう。

人の死と言う物は、それが他人であれ身内であれ、書いていて気分の良い物では無い。

ともあれ、俺の(決してノンビリとは言い難い)広島への一人旅は終わった。

できれば、また行ってみたい。

今回と同じく、一人旅で。

仲の良い人と一緒に数名で行っても良いだろうが、ペースを総て自分でコントロールできると言う意味では

一人の方が何かと気楽で良い。

もっとも、一人では話し相手もおらず、寂しいのも事実である。

どちらが良いかは一概に言い切れない。

どちらも良い所と悪い所がある。

大抵の物は一長一短で、良いも悪いも決め付けられないものだ。

最終的に、良かったと思える方を選べば良いだろう。

自分で良かったと思う事ができ、他人に迷惑をかけなければ、少なくとも悪い事では無い。

俺自身、今回の旅は良い経験になったと思う。

また、是非経験してみたいものだ。

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